[ア行(a)] [カ行(k)] [サ行(s)] [タ行(t)] [ナ行(n)] [ハ行(h)] [マ行(m)] [ヤ行(y)] [ラ行(r)] [ワ行(w)]
[「裏」私的 児童文学作家・作品紹介〔日本編〕(v)
[私的 児童文学作家・作品紹介〔日本編〕書名索引(c)
[私的 児童文学作家・作品紹介〔日本編〕画家索引(r)

私的 児童文学作家・作品紹介〔日本編〕

 日本の児童文学についてはきちんとまとめて語れるほど調べていない。そもそもそれほど読んでいない気がするし、読んだが忘れてしまったしまったものも随分ある。調べる資料も海外の作家・作品よりも多数あると思われるので、ここでは筆者が読んで内容や印象を覚えている作家・作品について、感想を交えて簡単に紹介するにとどめたいと思う。個人的な「感想」であって客観的な「評価」ではないことを了承して読んでいただきたい。読もうと思っていて読んでいない作家・作品もあるし、全作品はもちろん代表作も読んでいなければ基本的には掲載していないので、読書の参考程度と考えていただきたい。誤りなどあれば御教示いただければ幸いである。

2023年12月10日 鈴木朝子

凡  例

1.収録内容
 児童文学を執筆した日本の作家名を見出しにして、基本的に筆者が読んだ作品について簡単に紹介した。作家については名前の読みと生没年以外は自由記述とした。児童文学を書いている作家であれば、いわゆる児童文学専門の作家でなくても掲載したものもあり、児童文学作品以外でも筆者が読んでいる作品があれば掲載したものもある。幼年童話、民話・伝説・神話を書いている人は対象としたが、絵本、伝記・ノンフィクションのみの作家は除いた。作品以外では児童文学関連の評論・エッセイ、自伝等も一部記載した。未読のもので、これから読もうかと思っているものは一部掲載したものもある。
2.配列
 作家名の読みの五十音順。
 姓・名に分けられる場合は、姓の五十音順→名の五十音順。
 長音符(ー)、中黒(・)等の記号は配列上無視した。
 濁音・半濁音は清音と、拗促音は直音と同じとみなしたが、同列に並ぶ場合は、それぞれ清音→濁音→半濁音、拗促音→直音の順とした。
3.見出し人名と生没年
 見出し人名は一般的によく用いられる形で示した。
 読みと生没年は、見出し人名の後ろに( )に入れて示した。ひらがな表記の人名は読みのかわりに漢字を示したものもある。生没年は西暦で表示した。
4.紹介文
 本文中の単行本や短編集などの書名は『 』で、短編の作品名や雑誌名などは「 」で、シリーズ名は< >で示した。作品名は再刊時などで変更があった場合は適宜適当と思われるものを用いた。
5.作品
 書名、巻次、出版社、叢書名、出版年、挿絵画家名を記載した。叢書名は基本的には筆者が読んだ版のものとしたが、読んだ版の叢書名が不明の場合は省略してあるものもある。挿絵画家名はなるべく読み・生没年とともに記載した。
 シリーズ作品は初めにシリーズ名を< >に入れて示した。
 一つの作品で数多くの版がある場合は筆者が実際に読んだものを基本的に出したが、いくつかを併記したものもある。
6.主要参考文献
7.参照
 「見出し人名」は「裏」私的 児童文学作家・作品紹介〔日本編〕に、人名読みや書名はAmazon.co.jpアソシエートプログラムに、訳者は訳者名索引に、それぞれリンクしている。

ア行

あさの あつこ浅野 敦子/1954~  )
 学園もの・スポーツものからSF・時代小説まで、いくつかのシリーズを含め幅広い作品を数多く書いている現代の人気作家。『あさのあつこコレクション』(全7巻 新日本出版社 2007~2008)というのも出ているが、いくつかの作品を新装版としてまとめて再刊したもの。
『バッテリー』教育画劇(教育画劇の創作文学) 1996 佐藤真紀子絵 → 角川書店(角川文庫) 2003
『バッテリー』Ⅱ教育画劇(教育画劇の創作文学) 1998 佐藤真紀子絵 → 角川書店(角川文庫) 2004
『バッテリー』Ⅲ教育画劇(教育画劇の創作文学) 2000 佐藤真紀子絵 → 角川書店(角川文庫) 2004
『バッテリー』Ⅳ教育画劇(教育画劇の創作文学) 2001 佐藤真紀子絵 → 角川書店(角川文庫) 2005
『バッテリー』Ⅴ教育画劇(教育画劇の創作文学) 2003 佐藤真紀子絵 → 角川書店(角川文庫) 2006
『バッテリー』Ⅵ教育画劇(教育画劇の創作文学) 2005 佐藤真紀子絵 → 角川書店(角川文庫) 2007
『ラスト・イニング』角川書店(角川文庫) 2009 鈴木久美カバーデザイン ← 角川書店 2007 鈴木久美装丁
 野球をすることを通しての、思春期の少年たちの心を描く物語。よくできた話だとは思うが、「スポーツの物語」を求めて読むとちょっと「違う」かも。文庫版には番外編の短編が入っているものもあり、そちらの方がお得か。
天沢 退二郎あまざわ たいじろう/1936~2023)
 アーサー王伝説・宮沢賢治を含む、フランス文学・幻想文学の研究者にして詩人・児童文学作家。児童文学作品としては今で言うダーク・ファンタジーを執筆。やや暗くホラーっぽいところもあるので読者を少し選ぶかも。
『光車よ、まわれ!』筑摩書房(ちくま少年文学館4) 1973 司修装幀・さしえ → ブッキング 2004
 現実の中で不思議なことが起こるタイプのファンタジー。暗く無気味な感じが漂うが、「光車」のイメージが美しい。この人の作品では単独の作品のこれが一番好き。やっとこういう日本独特な味のある現代作品が読めるようになったんだなあと思ったもの。ちくま文庫からも出ていた。ジャイブのピュアフル文庫を経てポプラ文庫ピュアフルでも出た。
『闇の中のオレンジ』筑摩書房 1976 林マリ装幀・さしえ → ブッキング 2005
 次作の<三つの魔法>につながる話の(入っている)短編集。これだけで読むと何が何だかわからないかも。
<三つの魔法> 筑摩書房 林マリ装幀・さしえ → ブッキング(復刊ドットコム)
  1. 『オレンジ党と黒い釜』1978 → 2004
  2. 『魔の沼』1982 → 2004
  3. 『オレンジ党、海へ』1983 → 2004
  4. 『オレンジ党 最後の歌』2011
 このシリーズも現実の中で不思議なことが起こるタイプのファンタジー。1巻は三つの魔法がそれぞれバランスよく出てきてよくまとまっていておもしろかったが、2巻はそれだけでは結末がついてなくて、3巻は何だかよくわからないままに終わっちゃう感じで、ちょっと「うーん」だった。と思ってたら4巻が出ました。
『幻想の解読』筑摩書房 1981
 アーサー王伝説、トールキンなどのファンタジー・幻想文学についての解説書。一部のみ読了。
あまん きみこ阿萬 紀美子/1931~  )
 この人とは出会い損なった気がするなあ。幼年向けの作品を大人になってから読んでもやっぱり…。『あまんきみこ童話集』(全5巻 ポプラ社 2008)、『あまんきみこセレクション』(全5巻 三省堂 2009) が刊行されている。
『車のいろは空のいろ』ポプラ社 1968 北田卓史絵 → 講談社(講談社文庫) 1978
 タクシー運転手さんのいろいろな出会いを描いた幼年向けの物語。子どものころ読んだかもしれないし再読もしたが、軽かったらしくて忘れてしまったなあ。
『おにたのぼうし』ポプラ社 1969 岩崎ちひろ
 切なく悲しい物語の絵本。でも食べ物の描写が妙においしそうだったような…。岩崎ちひろの本というイメージが強いが、これはこの人の物語だったとは。
安房 直子あわ なおこ/1943~1993)
 メルヘンタッチの中の暗さも含めて好きな人も多いようで、講談社文庫・ちくま文庫などからもいろいろ再刊されていた。50歳という早い死の後10年余で選集『安房直子コレクション』(全7巻 偕成社 2004)が刊行された。
『ハンカチの上の花畑』あかね書房 1972 岩淵慶造絵 → 講談社(講談社文庫) 1977
 花からお酒を作る小人が出てくるお話。ほのぼのとした感じのタイトルながら、何だかちょっと暗い話だったような…。よく覚えていないのだが、私には合わなかったと思う。
安藤 美紀夫あんどう みきお/1930~1990)
 ジャンニ・ロダーリなどの珍しいイタリア児童文学の翻訳家で、児童文学全般の研究者でもあり。
『ポイヤウンベ物語』福音館書店 1966 水四澄子
 アイヌの伝説「朱の輪姫」をもとに作られた神話ファンタジー…なのだそうだが、どんな話だったか忘れてしまった。
『でんでんむしの競馬』偕成社 1972 福田庄助絵 → 講談社(講談社文庫) 1980
 自伝的な物語集(?)。暗くて内容が古かった感じが残っているけど…。
『世界児童文学ノート』1~3 偕成社 1975~1977 → てらいんく 2002
 世界全般を扱っている良質の研究書だと思うが、サミアドの魔法が日没までしか効かないのや、メアリー・ポピンズが「ナース」という形でしかやって来られないのは、「魔法」や「魔女」というものが現代では衰退してしまったからという論考などは何だか考えすぎのような気がした。
石井 桃子いしい ももこ/1907~2008)
 翻訳者としてA.A.ミルンの『クマのプーさん』をはじめ数多くの作品を手がけ、岩波書店などの児童書部門の編集者として、図書館の児童サービスの先駆者として、戦後の日本の児童文学界の、福音館の絵本と岩波の児童書で育った私の世代には「恩人」である偉大な人物。著作集に『石井桃子集』(全7巻 岩波書店 1998~1999)がある(『石井桃子コレクション』(全5巻 岩波現代文庫 2015)はこれから児童文学作品集4冊を『幻の朱い実』2冊と差し替え組み換えたもの)。世田谷文学館での回顧展で、この人の事績の一部しか知らなかったのだなあと思う。
『三月ひなのつき』福音館書店 1963 朝倉摂
 ひな人形のない家で、欲しい娘と昔持っていたものが忘れがたい母との心が綴られる物語。この人の創作の中で、私が一番にあげたいもの。ひな人形への思いというものがひしひしと感じられる。『石井桃子集 1』(岩波書店 1998)所収。
『ノンちゃん雲に乗る』光文社 1951 桂ユキ子絵 ← 大地書房 1947 → 福音館書店 1967 中川宗弥
 戦後日本のファンタジーの古典。この人の創作ならまずこれをあげるべきなのだが、大人になってから初めて読んだものであまり思い入れは…。『石井桃子集 1』(岩波書店 1998)所収。
『山のトムさん』光文社 1957 深沢紅子絵 → 福音館書店 1968 → 岩波書店(岩波少年文庫) 1980
 猫をめぐる山村の生活を描いたユーモアあふれるお話。古いが、これは大人になってから読んでもおもしろかった。『石井桃子集 2』(岩波書店 1998)所収。
『迷子の天使』光文社 1959 脇田和装丁 → 福音館書店 1986
 東京近郊の主婦の家庭をめぐる物語、らしい。これも大人になってから読んだが、内容を忘れてしまったなあ…。『石井桃子集 3』(岩波書店 1998)所収。
『べんけいとおとみさん』福音館書店 1985 山脇百合子
 ねこのとみ子(おとみさん)と犬のべんけいと子ども二人の家族の日常の生活。少し前の暮らしだが、こういうほのぼのとした作品は味わい深い。『石井桃子集 2』(岩波書店 1998)所収。
『いぬとにわとり』福音館書店 1968 八島光子
 犬を飼っていたおばあさんの家ににわとりたちがやって来て…という絵本。我が家ではすごくうけて、「なにもしません、~するだけ、~するだけ」という繰り返し部分をいろいろと応用して使っていた。『石井桃子集 2』(岩波書店 1998)所収。
『やまのこどもたち』岩波書店(岩波の子どもの本16) 1956 深沢紅子
『やまのたけちゃん』岩波書店(岩波の子どもの本20) 1959 深沢紅子
 一昔前の東北の山村の生活を描いた絵本の連作。自伝的作品? 私が読んだ時点でもかなり古い感じがした。いずれも『石井桃子集 2』(岩波書店 1998)所収。
『幼ものがたり』福音館書店(福音館日曜日文庫) 1981 吉井爽子
 未読。自伝。『石井桃子集 4』(岩波書店 1998)所収。
『幻の朱い実』 岩波書店 1994
 未読。自伝的長編小説。
『子どもの図書館』岩波書店(岩波新書) 1965
 家庭文庫活動の記録。図書館の児童サービスに関する基本図書。「新編 子どもの図書館」として『石井桃子集 5』(岩波書店 1999)所収。
『児童文学の旅』岩波書店 1981
 イギリスなどの児童文学ゆかりの地を訪ねた旅の記録。この手の本の先駆けでは…? 『石井桃子集 6』(岩波書店 1999)所収。
伊藤 遊いとう ゆう/1959~  )
 日本を舞台とした歴史ファンタジーの書き手の新鋭。
『鬼の橋』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 1998 太田大八
 平安時代の小野篁を主人公とした歴史ファンタジーで、「鬼」と「橋」がキーポイント。ほっとできる主人公の成長物語。
『えんの松原』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 2001 太田大八
 これも平安時代の歴史ファンタジー。暗い松原の雰囲気と怨霊の「黒い鳥」のイメージは秀逸。伴内侍はいい味出している「ばあさん」で楽しい。
いぬい とみこ乾 富子/1924~2002)
 戦後日本の児童文学の「古典作家」の一人だが、その割にはあまり読んでいないか…?
『北極のムーシカミーシカ』理論社 1961 瀬川康男絵 ← 久米宏一
 北極のクマとアザラシのお話。動物の生態に関する記述が織り込まれていることと、動物ファンタジーとしての「祭り」のシーンが印象的なもの。
『ながいながいペンギンの話』理論社 1963 山田三郎絵 ← 宝文館 1957 横田昭次絵
 同じく「動物」の物語としての、こちらは南極のペンギン兄弟の成長物語。かわいくやんちゃな兄弟の冒険が楽しい。岩波少年文庫からは大友康夫の挿絵で出ている。
『みどりの川のぎんしょきしょき』実業之日本社(創作少年少女小説) 1968 堀内誠一
 現実の中で不思議なことが起こるファンタジー。出てくるものやできごとや場所の雰囲気がちょっと無気味ながらとてもおもしろく読んだ。この人の作品で一つと言ったら私はこれかも。後の福音館書店版では挿絵は太田大八。
『木かげの家の小人たち』福音館書店 1967 吉井忠画 ← 中央公論社 1959
『くらやみの谷の小人たち』福音館書店 1972 吉井忠
 イギリスから来た小人たちの話。『木かげの家~』は小人たちと人間とのかかわりを描く物語。大人になってからファンタジーの「基本教養」として読んだので、思い入れはあまりないかも。続巻『くらやみの谷~』は未読。
『山んばと空とぶ白い馬』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 1976 堀内誠一
 未読。ファンタジー。
『子どもと本をむすぶもの』晶文社 1974
 児童文学関係のエッセイ集。
上橋 菜穂子うえはし なほこ/1962~  )
 日本児童ファンタジーの期待の書き手。最初に読んだ作品は今一つだったが、その後大いに見直して好きになった作家。文化人類学者でもあり。日本イギリス児童文学会の研究大会で聞いた講演もおもしろかった。2014年国際アンデルセン大賞受賞。
『精霊の木』偕成社(偕成社の創作文学) 1989 金成泰三絵 → 新装改訂版 2004 二木真希子
 異星が舞台のSF。残念ながら今一つだった。物静かな話という印象で、わくわくするおもしろさが少なかった気がする。
『月の森に、カミよ眠れ』偕成社(偕成社の創作文学) 1991 金成泰三絵 → (偕成社文庫) 2000 篠崎正喜カバー・表紙絵
 古代日本を舞台にしたファンタジー。ある意味未解決なところがあることも含め、物語はよくできているがただ楽しむにはやや重い。
<守り人>シリーズ 偕成社
 東洋風の世界を舞台にしたファンタジー。登場人物も印象的で、何よりも30代の女用心棒の主人公がかっこいい(←ミーハー)。地理・歴史・「別世界」を含めたこの世界のことがもっと知りたいと思わせる、とてもよくできた読みごたえのあるおもしろい物語。次第に舞台が広がりまだまだ話が続いていくかと思っていたので、完結が少し残念。現代日本ファンタジーの傑作。新潮文庫版・軽装版もあり。
『狐笛のかなた』理論社 2003 白井弓子装画・挿画 → 新潮社(新潮文庫) 2006
 架空の日本歴史もの、というか歴史ファンタジーというような作品。ちょっとはらはらしながら読んだが、相変わらず読ませる。
『獣の奏者 Ⅰ 闘蛇編』講談社 2006 浅野隆広
『獣の奏者 Ⅱ 王獣編』講談社 2006 浅野隆広
『獣の奏者 Ⅲ 探求編』講談社 2009 浅野隆広
『獣の奏者 Ⅳ 完結編』講談社 2009 浅野隆広
『獣の奏者 外伝 刹那』講談社 2010 浅野隆広
 戦いに「獣」を使う人々の世界を描くファンタジー。おもしろいけれど、シビアでハードな物語。闘蛇や王獣といった魅力的な「獣」たちの描写や彼らを巡る人々の人間模様が読ませる。
『鹿の王』 KADOKAWA 2014 影山徹装画 → (角川文庫) 2017
 ファンタジーの要素は薄いが、これも東洋風な「異世界」を舞台とした物語。「飛鹿(ピュイカ)」を乗りこなす人々、「医療」に従事する人々などが、緻密な食べ物や生活の描写とともに味わい深く読ませる。
魚住 直子うおずみ なおこ/1966~  )
 悩み多き青少年の「青春小説」の作家だが、幼年ものも書いている。心理学科を卒業しているらしい。
『非・バランス』講談社 1996 野村俊夫装画(表紙) → (講談社文庫) 2006
 いじめにあった経験を引きずっている中学生の少女がふっきるまでの物語。あまりじめじめとはせず割と軽くさっと読める小品。母親との関係や、主人公を助けてくれた女性の今後が気にかかる。
宇野 和子うの かずこ/1932~  )
 おもしろくて好きな作家なのに、あまり知られていないようで残念。この人の長編読み物はもっとないのかなあ…。絵も自分で描く作家の一人。
『ポケットの中の赤ちゃん』講談社(児童文学創作シリーズ) 1972 宇野和子
 お母さんのエプロンのポケットから小さな女の子が…という話。いかにも「ありそう」な数々の発想が良く、とてもおもしろかった。大好きな作品。
『おたふくか』佑学社 1983 宇野和子
 蚊取り線香を入れるかとりのぶたさんの、ナンセンスな幼年童話の小品。
江戸川 乱歩えどがわ らんぽ/1894~1965)
 日本の探偵・推理/怪奇・幻想小説の大御所。ペンネームがポーの名前を元にしたのは有名。作品として一般に一番知られているのはやはり児童ものの『怪人二十面相』『少年探偵団』か? 『少年探偵江戸川乱歩全集』(全46巻 ポプラ社 1964~1973)など児童書の全集・選集もいくつもある。海外ミステリーの紹介者としての功労も大きいらしい。
『怪人二十面相』ポプラ社(ポプラ社文庫) 1976 上山ひろ志
『少年探偵団』ポプラ社(ポプラ社文庫) 1976 上山ひろ志
 児童ミステリーの古典と言うべき作品か。1936~1937年の作。講談調の大げさな語り口で怪奇趣味もちりばめてあるというイメージを持っていて、大人になってから機会を得てこの2作をちょっと読んでみたが、あまり印象に残らなかった。このシリーズの主人公は小林少年かな? 明智小五郎は偉そうだけど何もしないみたいだったし、二十面相は一応悪役だから…。
遠藤 寛子えんどう ひろこ/1931~  )
 軽い現代ものの作家だと思っていたら、強く生きる少女を描いた歴史ものなどを多く書いているらしい。
『N.D.C.のなぞをとけ―名探偵はエンゼルさん』旺文社(旺文社創作児童文学) 1985 小林和子
 児童ミステリー。図書館で使うNDC分類が使われているということだけで読んだ話。
大石 真おおいし まこと/1925~1990)
 ベテラン作家。もっと読んでいる気もするのだが…。『大石真児童文学全集』(全16巻 ポプラ社 1982)が出ている。
『チョコレート戦争』理論社 1965 北田卓史絵 → 講談社(講談社文庫) 1977
 子どもたちとケーキ屋との争いを描いた話。結構おもしろかったと思うのだが、でもほとんど内容は忘れてしまった…。
『もりたろうさんのじどうしゃ』ポプラ社 1969 北田卓史
 子どものころ家にあってよく読んだ絵本。いろいろ手を入れてきれいになるところが良かったんだけど。シリーズ化されていたらしい。
大嶽 洋子おおたけ ようこ/1943~  )
 作品はあまりたくさんないようで、残念。
『黒森へ』福音館書店(福音館土曜日文庫) 1981 倉石隆
 昔話風の和風ファンタジー。オリジナルな感じもしっかりしているし、雰囲気がしっくりときまっていておもしろかった。素朴だが力強い感じで、こういう物語もいい。『黒森物語』のタイトルでちくま文庫からも出ていた。
岡田 淳おかだ じゅん/1947~  )
 この人の作品は、私には「当たり外れ」が激しいかも。あまり現実の子どもたちが出ない話の方が私には「向き」かな。絵も自分で描く作品が多い。
『二分間の冒険』偕成社(偕成社の創作) 1985 太田大八
 現実の子どもが別世界へ行くタイプのファンタジー。この人のはおもしろいらしいと聞いて、自分の好みに合いそうなものを選んでみたが今一つだった。
<こそあどの森の物語> 理論社 岡田淳
  1. 『ふしぎな木の実の料理法』1994
  2. 『まよなかの魔女の秘密』1995
  3. 『森のなかの海賊船』1995
  4. 『ユメミザクラの木の下で』1998
  5. 『ミュージカルスパイス』2000
  6. 『はじまりの樹の神話』2001
  7. 『だれかののぞむもの』2005
  8. 『ぬまばあさんのうた』2006
  9. 『あかりの木の魔法』2007
  10. 『霧の森となぞの声』2009
  11. 『水の精とふしぎなカヌー』2013
  12. 『水の森の秘密』2017
 森に住む少し変わった人々の、素朴なほのぼのとしたちょっと不思議な物語。メルヘンタッチの軽い短めなお話のシリーズだが、ときにほろ苦い哀感が感じられたりする「大人の味わい」を含む話もある。そんなことを考えなくても、気軽に楽しめるお話。
荻原 規子おぎわら のりこ/1959~  )
 「ライト・ファンタジー」というような作品を書く作家。会話を中心に現代的な「軽さ」があるので、人によっては合わなかったり今一つだったりするかも。私は好きだけど。<勾玉>三部作と『風神秘抄』にガイドブックとエッセイ集をセットにした『荻原規子コレクション』(全6巻 徳間書店 2016)もある。
<勾玉>三部作 伊東寛表紙画
 日本の神話・逸話を使ったファンタジー。自分と同じように翻訳児童ファンタジーを読んで育った世代がそれを肥やしにして、翻訳ものまがいでない、日本の素材を使った心から楽しめるオリジナルな「ハイ・ファンタジー」的作品を生み出すようになったんだなあと感慨深かったもの。トクマ・ノベルズEDGE版でも出たが、表紙はある意味衝撃的だった。
『風神秘抄』徳間書店 2005 いとうひろし表紙画
 言われてみれば久しぶりの、<勾玉>三部作の流れを汲む日本を舞台にしたファンタジー。時代は『薄紅天女』をさらに下った平安末期で、歴史上実在の人物が前作以上に出てくる分ファンタジー色は薄まったとも言えるが、蔑視されがちな「芸能」というものの持つ力を描いている。
『あまねく神竜住まう国』徳間書店 2015 いとうひろし表紙画
 <勾玉>三部作の流れを汲む『風神秘抄』の続編。前作に引き続き草十郎と糸世も主要人物として登場するが、主人公は歴史上実在の人物である源頼朝。伊豆に流されてきた頼朝が前作からの因縁とともに土地神である竜と絡む物語。
『これは王国のかぎ』理論社(ファンタジーの冒険) 1993 中川千尋絵 → 中央公論新社(中公文庫) 2007 佐竹美保
 失恋した現代の少女がアラビアン・ナイトの世界で「魔人族ジン」となって活躍するお話。現代の女の子の軽い語り口が気にならなければおもしろく楽しく読める。C☆NOVELS Fantasia版もあり。
『樹上のゆりかご』理論社 2002 八木美穂子装画
 『これは王国のかぎ』の続編にあたるが、高校生の学校生活を描いたリアリズムの青春もの。本の体裁としては児童書ではない。著者の自伝的な作品と言えるもののようだ。C☆NOVELS Fantasia版もあり。
<西の善き魔女> 中央公論社(C☆NOVELS Fantasia)
→<西の善き魔女> 中央公論新社 佐竹美保

 別世界ファンタジーの形を取った物語。新書ノベルズで児童書ではないが、味わいが表紙に合った軽いノリの「少女マンガ」で、波長が合えば明るく楽しく笑える話でおもしろく読める。女性たちが元気な物語。この「世界」のことがもっと知りたくなるが…。新書ノベルズで出た後、ハードカバーに再編されて出直した(『外伝3』だけハードカバーが先)。
<RDG レッドデータガール> 角川書店(カドカワ銀のさじシリーズ)→(角川文庫) 酒井駒子カバーイラスト
 山伏・忍者・陰陽師などが入り乱れる「和モノ」な「学園ファンタジー」。登場人物の描かれ方は例によって「少女マンガ」で、アニメ化やコミカライズもされて並行して刊行されたスニーカー文庫版はアニメ表紙だけど、角川文庫版にはオリジナルの表紙絵か採用されていて嬉しい。彼らのその後が気になるタイプの、楽しい良い物語だった。7冊目は外伝的作品集。
小沢 正おざわ ただし/1937~2008)
 動物ものの幼年童話を主に書いている。
『目をさませトラゴロウ』理論社(理論社・童話プレゼント) 1965 井上洋介絵 → 講談社(講談社文庫) 1980
 食いしん坊のトラの楽しいお話の連作集。子どものころ劇になっているのを見た覚えがある。批判もあった気がするが、幼年ものや民話にありがちなパターンで別に私は問題ではないと思う。

カ行

角田 光男かくた みつお/1924~  )
 地味な感じだが、ベテラン作家なので何かもっと読んでいたかも。
『やぶれだいこ鬼だいこ』実業之日本社 1969 田島征三
 土蔵にある破れた大太鼓は鬼とかかわりがあって…という話じゃなかったっけ?(全然違ったかも)
柏葉 幸子かしわば さちこ/1953~  )
 宇野和子とともに、子どものうちにおもしろく読めた児童ファンタジーを書く人。この人はたくさん作品を書いているなあ…。本業(?)は薬剤師だとか。
『霧のむこうのふしぎな町』講談社(児童文学創作シリーズ) 1975 竹川功三郎絵 → (講談社文庫) 1979
 不思議な町で過ごす夏休みの話。それぞれの人の店や仕事ぶりや人柄などがどれもおもしろく、どの場面もそれぞれに好き。今でも好きなとても気に入った物語。
『地下室からのふしぎな旅』講談社(児童文学創作シリーズ) 1981 タケカワこう絵 → (講談社文庫) 1984
 変わり者のおばさんとともに、地下室から不思議なところへ行って冒険する話。期待しすぎたのか、「同工異曲」のような気がしてもう一つだった。
『天井うらのふしぎな友だち』講談社(児童文学創作シリーズ) 1985 タケカワこう絵 → (講談社文庫) 1988
 姉弟の一家が引っ越してきた村の家に突然変な人たちがやってきて…という話。「夢」がキーとなる物語。話の展開は割と奇想天外な感じで楽しめた。
『ドードー鳥の小間使い』偕成社(偕成社ワンダーランド18) 1997 児島なおみ
 突然復活したドードー鳥に振り回されるユーモア・ファンタジー。「中学年向け」の軽くて読みやすく楽しいお話。
角野 栄子かどの えいこ/1935~  )
 ベテラン作家。軽いユーモアのある作品をたくさん書いているらしい。賞も多数受賞しているが、2018年には国際アンデルセン大賞を受賞した。
『魔女の宅急便』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 1985 林明子
『魔女の宅急便 その2 キキと新しい魔法』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 1993 広野多珂子
『魔女の宅急便 その3 キキともうひとりの魔女』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 2000 佐竹美保
『魔女の宅急便 その4 キキの恋』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 2004 佐竹美保
『魔女の宅急便 その5 魔法のとまり木』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 2007 佐竹美保
『魔女の宅急便 その6 それぞれの旅立ち』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 2009 佐竹美保
 「魔女」が日常の中に普通に存在している、現実とはちょっとだけ違う世界のお話。宮崎駿のアニメで有名になったが、「魔女」を「宅急便」と結びつけるというワン・アイデア・ストーリーであっさりした好感の持てる小品といった感じだったが、一代記に育った。続編は未読(あれ、1から3まではみんな挿絵画家が違う…)。
神沢 利子かんざわ としこ/1924~  )
 大陸的な雄大なファンタジーと幼年ものの作家。この人も「古典作家」の一人で好きだが、思いのほか読了が少ないなあ…。選集に『神沢利子コレクション』(全5巻 あかね書房 1994)、『神沢利子のおはなしの時間』(全5巻 ポプラ社 2011)がある。
『ちびっこカムのぼうけん』理論社 1961 山田三郎
 ユーラシア大陸風な風俗のエキゾチックさとスケールの大きさが感じられるファンタジー冒険物語。ディテールも含めて、文句なく大好きな作品。
『ヌーチェのぼうけん』理論社 1966 赤羽末吉
 大陸的な北の国での元気な少年のファンタジー冒険物語。読んだと思うのだが、今一つはっきりしない…。
『銀のほのおの国』福音館書店 1972 堀内誠一画 → 福武書店(福武文庫) 1991
 現代の子どもたちが入り込んだ動物たちの世界での戦いを描くファンタジー。おもしろかったけれど、大人になってから読んだせいかやや教訓臭が感じられたような…。
『くまの子ウーフ』ポプラ社(ポプラ社の創作童話11) 1969 井上洋介
『続くまの子ウーフ』ポプラ社(こども童話館9) 1984 井上洋介
 幼年向けの動物のお話の連作集。幼児が共感しやすい楽しいお話で、小さいころに読んだ、家にあって好きだった物語。続編は未読(できていたんだなあ…)。絵本シリーズもあるようだ。
『ふらいぱんじいさん』あかね書房(日本の創作幼年童話5) 1969 堀内誠一
 旅に出た年取った(?)フライパンの冒険を描いた幼年向けの物語。これも家にあって子どものころよく読んだ好きだった物語。
『流れのほとり』福音館書店(福音館日曜日文庫) 1976 瀬川康男
 未読。自伝的作品。
『おばあさんになるなんて』晶文社 1999
 未読。自伝エッセイ? 自伝的小説?
銀林 みのるぎんばやし みのる/1960~  )
 今のところ「児童文学」とは言えずいわゆる「ファンタジー」とも言いがたい(が不思議な魅力のある)作品1作のみの作家。他の作品は…?
『鉄塔 武蔵野線』新潮社(新潮文庫) 1997 銀林みのる写真 ← 新潮社 1994
 これは少年が家の近くの送電線の鉄塔を一つずつたどっていく、という物語である。ほぼそれだけの単調そうな話なのに、不思議な迫力のある読ませる一作。第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞。2007年にソフトバンク文庫から「完全版」が出た。
小風 さちこかぜ さち/1955~  )
 絵本作品や翻訳なども手がけている。
『ゆびぬき小路の秘密』福音館書店 1994 小野かおる
 1960年代のイギリスを舞台としたタイム・ファンタジー。イギリスの描写は翻訳もののように自然な感じだが、ストーリーの運び方がややぎごちない気がする。何かもう一ひねり欲しいところ。
『倫敦厩舎日記(ロンドン・ステイブル・ダイアリー)』文藝春秋 1992 坂川栄治装幀
 馬術を習うことを中心にしているイギリス滞在記。筆者自身の体験や厩舎で働くいろいろな人たちの人間模様が興味深い。

サ行

斎藤 惇夫さいとう あつお/1940~  )
 ネズミを中心とした動物の冒険物語を執筆。藪内正幸さんの絵との組み合わせもいい。編集者としてのキャリアも長いらしい。
『グリックの冒険』牧書店(新少年少女教養文庫27) 1970 藪内正幸画 → 岩波書店 1982
 飼われていたリスが「本当のうち」である森をめざす話。苦労しながら旅をするというのが、ノンフィクションの冒険読み物が好きだった小学生時代の読書の好みに合っていたかも。講談社文庫でも出ていた。
『冒険者たち―ガンバと十五匹の仲間』牧書店 1972 藪内正幸画 → 岩波書店 1982
 町のネズミたちが、ある島に住むネズミたちを助けに行きイタチと戦う話。より「動物ファンタジー」と言える話になっているが、結構厳しい話なので個人的には『グリックの冒険』の方が好き。講談社文庫でも出ていた。
『ガンバとカワウソの冒険』岩波書店 1982 藪内正幸
 未読。講談社文庫でも出ていた。
『僕の冒険(ファンタジー)―子どもの“時”に向かって』日本エディタースクール出版部 1987
 児童文学関係のエッセイ集。
『子どもと子どもの本に捧げた生涯―講演録 瀬田貞二先生について』キッズメイト 2002 西巻茅子装幀・挿画
 子どもの本の訳者・絵本の作者などとして知られた瀬田貞二の仕事と生涯について語った講演をまとめたもの。瀬田貞二の仕事に感銘したことのある者にとっては興味深いものである。
斉藤 洋さいとう ひろし/1952~  )
 動物もの、別世界ファンタジー、歴史ものといろいろなタイプの作品が書ける作家。
『ルドルフとイッパイアッテナ』講談社(児童文学創作シリーズ) 1987 杉浦範茂
『ルドルフともだちひとりだち―続:ルドルフとイッパイアッテナ』 講談社(児童文学創作シリーズ) 1988 杉浦範茂
『ルドルフといくねこくるねこ―ルドルフとイッパイアッテナIII』講談社(児童文学創作シリーズ) 2002 杉浦範茂
 見知らぬ町へ行ってしまった猫が、当地の猫とともに暮らしていく話。人間の字を勉強したりするのがミソ。ちょっと教訓話っぽいところがないでもないが、楽しく読める物語になっている。3作目が出たのでまだ続くかも。
『ジーク―月のしずく 日のしずく』偕成社(偕成社ワンダーランド5) 1992 小澤摩純
『ジークII―ゴルドニア戦記』偕成社(偕成社ワンダーランド24) 2001 小澤摩純
 孤児の主人公の少年が実は…というよくあるタイプの別世界ファンタジーかもしれないが、主人公の今後はいかに。続編が出て周辺諸国の話とかも出てきたし先がありそうなので、現状のままというわけにはいかないかな。淡々としているがイメージが美しいところは好み。
斎藤 隆介さいとう りゅうすけ/1917~1985)
 切絵の滝平二郎とのコンビの絵本の作家だと思っていた。『斎藤隆介全集』(全12巻 岩崎書店 1982)が刊行されている。
『ベロ出しチョンマ』理論社 1967 滝平二郎絵 → 角川書店(角川文庫) 1976
 時代物の短編集。表題作は悲しい話だし、他に入っていたのがどんな話だったかすっかり忘れてしまった。
『ちょうちん屋のままッ子』理論社 1970 滝平二郎絵 → 角川書店(角川文庫) 1976
 幕末から明治の時代の立身出世ものの長編。これもあまりおもしろいとは思わなかったなあ。
『八郎』福音館書店 1967 滝平二郎
『三コ』福音館書店 1969 滝平二郎
 「海」と「山」にかかわる「巨人」ものの絵本。自己犠牲の精神がどうとかという評価はともかく、ダイナミックな絵とストーリーに打たれる。なまじな文章の物語より絵本としての力のある作品。
『花さき山』岩崎書店 1969 滝平二郎
 やさしいことをすると花が咲く、という話の絵本。これも自己犠牲的教訓を含む話だが、絵とストーリーが美しいのであまり鼻につかなくて結構好き。
『モチモチの木』岩崎書店 1971 滝平二郎
 「勇気」について描かれた絵本。かなり大きくなってから読んだが、素直に心に感じられたもの。決心しても泣きながら医者を迎えに行くところや、一度頑張った後そのまま強くなるんじゃなくてやっぱり「じさまぁ」となっちゃうところが微笑ましくていい。このコンビの絵本ではこれが一番好きかも。
『ひさの星』岩崎書店 1972 岩崎ちひろ
 少女の悲しい物語の絵本。「感動的」な話だが私的には悲しいのは嫌。岩崎ちひろの本というイメージだったが、これも斎藤隆介だったんだ…。
佐々木 たづささき たづ/1932~1998)
 失明という個人的事情への同情や興味からなどではなく、純粋に幼年向けの物語の作家として読まれて欲しい人。
『白いぼうしの丘』偕成社(偕成社文庫) 1976 鈴木悦郎さし絵
 処女作品集『白い帽子の丘』(三十書房 1958) の全収録作に、第2作品集『もえる島』(三十書房 1960) 収録の7作から5作を加え、全12作を収録したもの。「少年と子ダヌキ」はかわいくて良かった。木漏れ日の光の糸で傘を修繕する男の話「金の糸とにじ」はイメージがとても美しくて気に入った。
『子うさぎましろのお話』ポプラ社 1970 三好碩也
 うさぎの子のクリスマスものの絵本。絵も素朴ながら良かった。クリスマス・ツリーのシーンのイメージは美しくて好き。
『ロバータ さあ歩きましょう』朝日新聞社 1964 → 偕成社(偕成社文庫) 1977
 未読。盲導犬との体験を書いた自伝エッセイ。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
佐藤 さとるさとう さとる/1928~2017)
 戦後日本の児童ファンタジーの第一人者だと思っている。『佐藤さとる全集』(全12巻 講談社 1972~1974)、『佐藤さとるファンタジー全集』(全16巻 講談社 1982~1983)をはじめ、絵本や文庫など様々な形で数多くの作品が出ている。挿絵の村上勉とのコンビで有名(※初期の村上勉の挿絵でないものの一部は「佐藤暁」表記)。『佐藤さとる幼年童話自選集』(全4巻 ゴブリン書房 2003~2004)というのも出た。
<コロボックル物語> 講談社 村上勉
 戦後日本の児童ファンタジーの代表的作品だと思う。ひっそり生きてきた小さな人たちと人間との交流の物語。道具を工夫するところなどのディテールもおもしろい。個人的には、3作目を最初に読んでから1・2作目を若菜珪の挿絵の本で読んだため2作目と3作目の間に実際以上のギャップを感じてしまったり、4作目は番外編か外伝のような感じを持ったり、5作目はかなり間を空けて読んだためか自分の中で確立させてしまった世界への新刊はもう余計な感じがしてしまったりしたが。別巻やその他の短編は未読。
『海へいった赤んぼ大将』あかね書房(創作児童文学選4) 1968 村上勉
『赤んぼ大将山へいく』あかね書房(創作児童文学選16) 1970 村上勉
『赤んぼ大将さようなら』あかね書房(ジョイ・ストリート) 1997 しんしょうけん
 無力な赤んぼだけど動物や機械とお話ができて特別な服を着ると…という赤ちゃんの冒険物語。赤ちゃんが実はこっそり冒険して活躍していたらという空想から生まれた楽しいお話。最近完結編(?)がなんと主人公のモデルだったという息子さんの挿絵で出たけれど、自分の中で確立させてしまった世界への新刊はもう余計な感じがしそうで未読。
『ジュンと秘密の友だち』岩波書店(岩波ものがたりの本113) 1972 村上勉
 男の子が裏庭に小屋を作ろうとして、見慣れない子が手伝いに来てくれるのだが実は…という話。ファンタジーの部分より、男の子が苦労して小屋を作る過程がすごく好きだった。
『てのひら島はどこにある』理論社(理論社・童話プレゼント) 1965 池田仙三郎絵※
 いろいろな虫の神様が出てくる空想の部分と、現実の日常の部分とが交互に語られる話…だったと思う。ファンタジーじゃない部分も含めて結構好きだったもの。
『わんぱく天国―按針塚の少年たち』講談社 1970 村上勉
 自伝的物語。子どもたちの遊びがすごく生き生きとしていて、私にとってはもうなじみのない古い話になるのだがとてもおもしろかった。
『おばあさんのひこうき』小峰書店(創作幼年童話9) 1966 村上勉
 蝶の羽の模様の編物で…という発想の素晴らしいお話。同じ村上勉だが、初版後絵が変わってしまったので、昔家にあった古い絵の、絵本に近い大きさの本が欲しいな…。
『そこなし森の話』実業之日本社 1966 村上勉
 ちょっと不思議なお話を集めた短編集。「りゅうぐうの水がめ」とか「四角い虫の話」とかがおもしろかった。
『マコトくんとふしぎないす』偕成社 1968 村上勉
 いすを馬に見立てて逆向きにすわって動かすと…という話だったと思う。細かいことは忘れてしまった…。
『タツオのしま』講談社 1971 村上勉
 池の中に島を造り、島に神社に見立てた石を置いたら…という話。後半のファンタジーの部分より、島を造って石を置く、という部分が印象に残っている。
『ぼくのつくえはぼくのくに』学習研究社 1971 村上勉
 鉛筆とかの文房具たちが夜中に「つくえの国」でなにやら争う話…だったかな。結構共感できる話だったような気がするのだが、詳細はすっかり忘れてしまった。
『カラッポの話』あかね書房 1973 村上勉
 きれいな包み紙の箱のようなものが部屋にあったのであけてみると…という話。何だかよくわからない変な話だったような気がするが、包み紙のイメージがきれいだった。
『おおきなきがほしい』偕成社 1971 村上勉
 こんな木があったら…と次々ふくらむ少年の空想を描いた絵本。この物語に対する不満としては、あれが想像上の話にすぎないということ。あんな木はどうせまずないのだから、せめてお話の中だけでも「本当」であればいいのに、と思ってしまった。それだけおもしろかった、ということなのだが。だから実際に小屋を作る『ジュンと秘密の友だち』が好きなのかも。
 全集収録版ではタイトルは「大きな木がほしい」。
『ファンタジーの世界』講談社(講談社現代新書) 1978
 児童ファンタジーを取り上げた評論集。
佐藤 多佳子さとう たかこ/1962~  )
 安心して読める筆力のあるうまい人という感じ。「大人向け」の気軽に読める話も好き。
『イグアナくんのおじゃまな毎日』偕成社(偕成社おたのしみクラブ) 1997 はらだたけひで絵 → 中央公論新社(中公文庫) 2000
 思いがけずイグアナを飼うはめになって、すったもんだする話。前半少し辛いところもあったけど、全体としては楽しく読める良い話。イグアナをちょっと飼ってみたくなる?
『ハンサム・ガール』理論社(童話パラダイス10) 1993 伊藤重夫
 野球をやっている女の子の話。いろいろ反発や挫折や家庭のごたごたなどもあるけれど、そのへんを一通りくぐり抜けて「さわやかな」物語になっていて、後味の良い話で楽しかった。
『しゃべれども しゃべれども』新潮社 1997 山本祐司装画 → (新潮文庫) 2000
 若い落語家と「話し方」を勉強しに来る「生徒」たちとの物語(「大人向け」の本)。主人公をめぐる人間模様がおもしろい話。
『神様がくれた指』新潮社 2000 吉田篤弘,吉田浩美装幀・扉絵 → (新潮文庫) 2004 谷本ヨーコカバー装画
 スリと占い師の二人の青年の物語。これも「大人向け」の本。スリの「職人気質」や占い師の心理がよくわかるような気になるが、思いのほかハードで重いところがあった。
『黄色い目の魚』新潮社 2002 牧野千穂装画・挿画 → (新潮文庫) 2005 井筒啓之カバー装画
 高校生の少女と少年交互の視点で描かれた、オムニバス長編の青春物語。「痛い」感じがする悩み多き青春ものだが、うまい作品なので読むのはそんなに辛くない。
『一瞬の風になれ 1 イチニツイテ』講談社 2006 クサナギシンペイイラスト → (講談社文庫) 2009
『一瞬の風になれ 2 ヨウイ』講談社 2006 クサナギシンペイイラスト → (講談社文庫) 2009
『一瞬の風になれ 3 ドン』講談社 2006 クサナギシンペイイラスト → (講談社文庫) 2009
 陸上競技を中心とした青春もの。登場人物の心理描写はもちろん、練習や競技会の様子もリアルで、全く知識のない陸上競技の用語などが使ってある部分も自然に読めるのはさすが。近年の青春スポーツものの名作の一つ。
『ごきげんな裏階段』新潮社(新潮文庫) 2009 金子恵カバー装画・挿画 ← 理論社(メルヘン共和国) 1992 岡本良子画 → 日本標準(シリーズ本のチカラ) 2009 小平彩見
 一つのアパートを舞台にした「タマネギねこ」「ラッキー・メロディ」「モクーのひっこし」の3編からなる連作短編集。普通の物語かと思って読み出したら…ファンタジーだった。荒唐無稽な展開にちょっとびっくりだが、人間模様の書き方がうまい。
『サマータイム』新潮社(新潮文庫) 2003 内田新哉カバー装画
 ←『サマータイム―四季のピアニストたち・上』MOE出版 1990 → 偕成社(偕成社コレクション) 1993 毬月絵美装画
 ←『九月の雨―四季のピアニストたち・下』MOE出版 1990 → 偕成社(偕成社コレクション) 1993 毬月絵美装画
 視点を変え、時期も前後しながら描かれていく「サマータイム」「五月の道しるべ」「九月の雨」「ホワイト・ピアノ」の4編からなる連作短編集。文庫版は単行本2冊の合本。デビュー作だが、二つの家族をめぐる青春小説としても良作。
『いつの空にも星が出ていた』講談社 2020 木内達朗
 1984年から2017年に至る、横浜のプロ野球球団を背景とした人々の物語の短編集。なじみ深いものが多く、楽しい。それぞれの物語自体もうまく、おもしろく読めた。
澤田 徳子さわだ のりこ/1947~  )
 ファンタジー、ミステリー、現代ものなどいろいろ書いているようだが、何かもう一押し…。
『きらめきのサフィール』くもん出版(くもんの創作児童文学1) 1988 藤川秀之
 現実の子どもが別世界へ行くタイプのファンタジー。タイトルに惹かれて読んだのだが、うーん覚えてない…。
『ウロコ』教育画劇(スピカ創作文学10) 1994 太田大八
 竜とそのウロコをめぐる、中国の昔話風の「竜を見た」、SFの「再会」、西洋の昔話風の「仮面王女」、日本の昔話風の「不帰山物語」、現代日本の物語の「神竜」というバラエティに富んだ短編集。「再会」と「不帰山物語」が泣けるお話。
重清 良吉しげきよ りょうきち/1928~1995)
 「少年詩」の詩人。個人的には小学生のころ通っていた塾の先生。児童文学を志し、学校教師を務めたのち、長年横浜で名物私塾の教師をしていたが、遂に「詩人」になった人。
『村・夢みる子』神無書房 1983 高田三郎装画
『街・かくれんぼ』神無書房 1983 高田三郎装画
 自費出版の詩集。通して読んでいくと自伝的な物語のように読める。塾の国語の授業の際に教材として使われたものもあった。
『おしっこの神さま』理論社(詩のみずうみ) 1985 油野誠一
 新作と、『村・夢みる子』『街・かくれんぼ』の2冊から選んだものとを取り混ぜた詩集。タイトルとしてはやはり表題詩が印象的か。
『草の上』教育出版センター(ジュニア・ポエム双書118) 1996 高田三郎
 未読。遺作詩集。出ていたんだなあ…。
『詩のあるエッセイ』教育出版センター(以文選書39) 1993
 詩を含んだエッセイ集。
芝田 勝茂しばた かつも/1949~  )
 最初に読んだ作品はテクニックがまだまだという感じだったけれど、その後少し見直した作家の一人。岡田淳とは逆に、ファンタジーでも「別世界」より「現実」を使った話の方が私には「向き」かな。
『ドーム郡ものがたり』福音館書店(福音館土曜日文庫) 1981 和田慎二
『虹へのさすらいの旅』福音館書店(福音館土曜日文庫) 1983 和田慎二
<ドーム郡シリーズ> 小峰書店 佐竹美保
  1. 『ドーム郡ものがたり』 2003
  2. 『虹への旅』 2004
  3. 『真実の種、うその種』 2005

 別世界ファンタジーの連作。意欲は買うが、基本的な小説作りのテクニックがまだすごく下手だと感じた。挿絵も人物の顔やものの輪郭をくっきり描くタイプの漫画の絵でイメージを非常に固定化・限定化しやすく、「イラスト」としてはあまり賛成できない。
 その後、出版社・挿絵を変え完結編を加えて再刊。旧作も改稿されたとのことだが…?
『ふるさとは、夏』福音館書店(福音館創作童話シリーズ) 1990 小林敏也絵 → パロル舎 1996
 いなかに来た少年の「普通」の物語風の出だしだが、途中からやおらファンタジーになる(笑)。いろいろな神様たちの造型がおもしろい。終わり方はパロル舎版の方がさっぱりしていていいかも。
庄野 英二しょうの えいじ/1915~1993)
 一作のみの作家かと思っていたら、『庄野英二全集』(全11巻 偕成社 1979~1980)というものも出ていた。
『星の牧場』理論社 1963 長新太絵 → 角川書店(角川文庫) 1976
 「戦争ファンタジー」とでも言う話か。戦争が絡む話なんて感傷的で嫌いなタイプの話なんじゃないかと思っていたが、思いのほかイメージが美しくて気に入った。
末吉 暁子すえよし あきこ/1942~2016)
 中学年向けの物語などを多数書いている「中堅作家」という感じなので、何かもう少し読んでいるかと思ったのだが…。
『雨ふり花 さいた』偕成社 1998 こみねゆら
 かわいい座敷わらしが出て来るタイム・ファンタジー的なところもある話。謎解きもあっておもしろかったが、タイトルが内容を表していないような気がした。
瀬尾 七重せお ななえ/1942~  )
 良質な「メルヘン」の作家という感じだが、初期のころの作品集が現在では手に入らないようで残念。
『ロザンドの木馬』講談社 1968 司修絵 → (講談社青い鳥文庫) 1981
 親を亡くして親戚の家に引きとられたちょっと変わった女の子と、誕生祝いにもらった木馬をめぐる不思議な話。上質な「メルヘン」という感じの、イメージの美しい味わい深い物語。

タ行

たかし よいち高士 與市/1928~2018)
 考古学者を志したことがあり、恐竜ものなどの児童ノンフィクションの仕事も多い。『古代発掘物語全集』(全7巻 国土社 1967~1968)、『なぞの古代生物』(全8巻 国土社 1969~1971)などの著作集もある。何かもっと読んでいたような気がするのだが、「これ」というものが思い出せない。
『竜のいる島』理論社 1984 太田大八絵 ← アリス館牧新社 1976
 海竜の謎を探る物語。期待させておいて何だかはっきりしないまま終わってしまったようで大作の割に今一つだった気がする。
『しらぬい』岩崎書店 1970 斎藤博之
 絵本。読んだはずなんだけど、どういう話だったっけ…。
『がわっぱ』岩崎書店 1971 斎藤博之
 ユーモラスな河童の話の絵本(だったと思う…)。
高楼 方子たかどの ほうこ/1955~  )
 長編物語にはまだ「気負い」というかややぎごちなさが感じられるが、方向的には好きになれる作家。 絵本の作品もある。
『時計坂の家』リブリオ出版 1992 千葉史子
 不思議な別世界に惹かれていく少女の物語。C.S.ルイスの<ナルニア国ものがたり>の影響が感じられる。おもしろかったけれど、ファンタジーというよりちょっとホラーっぽい感じも。
『十一月の扉』リブリオ出版 1999 千葉史子表紙装画,高楼方子本文カット → 新潮社(新潮文庫) 2006 藤本将カバー装画
 中2の少女がふと見かけた家に2か月間下宿するという物語。思春期の少女の心を丁寧に描いた、「イギリスの香り」がする心暖まる作品。話中話も楽しい。
竹下 文子たけした ふみこ/1957~  )
 デビューが早かったらしいのでもう「中堅作家」という感じ。最近の作には一見軽い話の中に、いろいろと深いものが感じ取れるところに力量がうかがえる。
『星とトランペット』講談社(児童文学創作シリーズ) 1978 牧野鈴子絵 → (講談社文庫) 1984 → ブッキング 2004
 初期作品集。読んだことになっているけど忘れた…。
『わたしおてつだいねこ』小学館(小学館の創作童話) 1986 鈴木まもる画 → 金の星社 2002
『はしれおてつだいねこ』小学館(小学館の創作童話) 1989 鈴木まもる画 → 金の星社 2002
『おてつだいねこのクリスマス』小学館(小学館の創作童話) 1989 鈴木まもる画 → 金の星社 2002
『おてつだいねこのこもりうた』金の星社 2003 鈴木まもる
 意欲はあるけど実力の伴わない、どじだけどかわいいねこのお話。おてつだいしようとするとかえって手間を増やすことになってしまって…。しかし3作目はなんと立派に「役に立った」お話になっている。ほのぼのとした短い幼年ものの連作。
<黒ねこサンゴロウ> 偕成社 鈴木まもる
  1. 『旅のはじまり』1994
  2. 『キララの海へ』1994
  3. 『やまねこの島』1994
  4. 『黒い海賊船』1994
  5. 『霧の灯台』1994
<黒ねこサンゴロウ 旅のつづき> 偕成社 鈴木まもる
  1. 『ケンとミリ』1996
  2. 『青いジョーカー』1996
  3. 『ほのおをこえて』1996
  4. 『金の波 銀の風』1996
  5. 『最後の手紙』1996

 船乗りねこの冒険物語のシリーズ。クールな一匹狼である海の男のお話。それぞれおもしろいが、人間の子どもが主人公になるそれぞれのシリーズの1巻目が、ほとんど「ねこの世界」だけで展開する他の巻とちょっと浮いている感じがした。ヴォリュームは「中学年向け」で単なる軽い冒険ものとしても読めるが、いろいろと深いものが感じられる。もちろん「大人の深読み」などしないで単純に楽しく読んで構わないのだけれど。
立原 えりかたちはら えりか/1937~  )
 日本の「メルヘン」の代表的な作家か。『でかでか人とちびちび人』(講談社 1961)でデビュー、作品集に『立原えりか作品集』(全7巻 思潮社 1972~1973)、『立原えりかのファンタジーランド』(全16巻 青土社 1980~1981)などがある。もう少し読んでみるべきかなあ…。
<立原えりかの世界> サンリオ(サンリオ文庫) 丸山明子カバー
  1. 『はかない心』1985
 いわゆる「メルヘン」の短編集。甘ったるい感じがして、このタイプの作品はどうも私には合わないようだ。
たつみや 章たつみや しょう/1954~  )
 なかなか読ませるファンタジーを書く作家だが、「環境問題」や「戦争」がテーマとしてかなり生のままで出てくる感じ。わかりやすく、よくできていると思うが、やや生硬な気も。別名義「秋月こお」。
『ぼくの・稲荷山戦記』講談社 1992 林静一絵 → (講談社文庫) 2007 波津彬子カバー装画
 中学生の少年がかかわった、地元の稲荷山開発を神様がらみで止めようとする顛末を描くファンタジー。うまくできている話でおもしろかったが、最近ではファンタジーで「環境問題」を扱った話が多いんだろうか。
『夜の神話』講談社 1993 かなり泰三絵 → (講談社文庫) 2007 波津彬子カバー装画
 原発事故に神様や「家霊」が絡む物語。これもファンタジーの形で「環境問題」を扱った話と言える。かなりわかりやすく書かれているが、このラストですべてうまく解決するのか?とかちょっと考えてしまう。
『水の伝説』講談社 1995 藤田新策絵 → (講談社文庫) 2007 波津彬子カバー装画
 大雨による山崩れにカッパや水の神である龍や山の女神が関わるファンタジー。これも山崩れは実は自然災害でなくて人災であるという「環境問題」な話。主人公の精神的な成長、「神」と信仰のありようなども描いている。
<月神シリーズ> 講談社 東逸子
 古代日本を舞台としたファンタジーの四部作+外伝。細部の生活面までを含め世界はよくできていて読みごたえがありおもしろい。終わり方の意外性は少ないとはいえ、決して甘くない結末には厳しいものが感じられるが、縄文(古いもの)=善、弥生(新しいもの)=悪というような図式の単純化、「戦争」というものについてのメッセージ的な部分の生臭さがやや気になる。
辻 邦生つじ くにお/1925~1999)
 「大人向け」の小説家、フランス文学者として知られている。代表作に歴史小説『背教者ユリアヌス』(中央公論社 1972)など。
『ユリアと魔法の都』筑摩書房 1971 勝本富士雄
 子どもだけの「ユートピア」へ行く少女の話。子どものころに読まなかったためか、私には全然駄目だった。
筒井 敬介つつい けいすけ/1918~2005)
 演劇やテレビなどで児童劇作家・脚本家としても活動しているらしい。ケストナーの『五月三十五日』の翻訳(訳題『スケートをはいた馬』)などもしていた。作品集に『筒井敬介児童劇集』(全3巻 東京書籍 1982)、『筒井敬介童話全集』(全12巻 フレーベル館 1983~1984)がある。
『コルプス先生汽車へのる』偕成社(偕成社文庫) 1976 大古尅己絵 ←季節社 1948 岩崎ちひろ
 「無国籍童話」の一つ。読んだはずだが、どんな話だったかすっかり忘れてしまった。
寺村 輝夫てらむら てるお/1928~2006)
 初読は早く「古典作家」の一人と言うべきだと思うのだが、代表作などとのきちんとした出会いをし損ねた作家という気がする。ナンセンスものが多いがノンフィクションの作品もあり、『寺村輝夫童話全集』(全20巻 ポプラ社 1982)、『寺村輝夫全童話』(全8巻 理論社 1996~2000)という全集も出ている。
『ノコ星ノコくん』理論社(理論社・童話プレゼント) 1965 和田誠
 ナンセンス・ファンタジーというかSFというか…。この人の作品の中ではあまり知られていないものではないかと思うが、小学生になるかならないかの頃に読んで、すごくおもしろいと思った作品。
『こびとのピコ』大日本図書(子ども図書館) 1968 和歌山静子
 オムくんの話を含む短編集。連作短編集だったかな?(もしかして長編だったか?) 同じ和歌山静子の絵で新版も出ているようだが、私は旧版の絵がいいな。
『消えた二ページ』理論社(Fantasy-Book 4) 1970 中村宏
 ちょっと無気味なところもあるミステリアスなファンタジー。ほのぼのなイメージを持っていると、少し意外な「毒」のあるという感じの変な話だった。
『ぼくは王さま』理論社 1961 和田誠
 「王さま」が主人公の幼年向け物語。シリーズとなっているようだが、2作目以降の挿絵の和歌山静子の絵の方で覚えているので、1作目はちゃんと読んでいないかも。「毎日が日曜日」のエピソードを雑誌で読んだような…。全10作で全1冊版もあったが、のちにすべて和歌山静子挿絵の全11冊に再編された。
『おしゃべりなたまごやき』福音館書店 1972 長新太
『ぞうのたまごのたまごやき』福音館書店 1984 長新太
 「王さま」シリーズの絵本バージョン。
富安 陽子とみやす ようこ/1959~  )
 軽めの「中学年向け」の物語が多いようだが、現実を舞台とした楽しいファンタジーの書き手。
『空へつづく神話』偕成社 2000 広瀬弦
 学校の図書室に突然現れた白ヒゲの「神様」と少女の物語。この話を読むと、郷土の歴史っていうのは意外に面白いものなのかも、と思わせてくれる。いい意味で軽く、ほっとできる物語だった。
『ふたつの月の物語』講談社 2012 酒井駒子装画
 「美月(みづき)」と「月明(あかり)」という月にちなむ名前を持つ二人の少女の出自にまつわる謎が絡む物語。もっと書きこめそうなのが惜しいがなかなかおもしろかった。

ナ行

中川 李枝子なかがわ りえこ/1935~  )
 戦後日本の絵本界に大きな貢献をした、絵本(文章担当)と幼年向けの物語の作家。妹の山脇(昔は大村)百合子の絵との組み合わせが多い。童謡「てをつなごう」やアニメ「となりのトトロ」のオープニングの歌「さんぽ」などの作詞も。
『ももいろのきりん』福音館書店 1965 中川宗弥
 紙で作ったきりんと女の子の冒険(?)物語。色鮮やかなのが好きなこともあって気に入った作品。キリカは紙でできているのにすごく力強いのが頼もしい。
『いやいやえん』福音館書店 1962 大村百合子
 保育園の幼児の日常と空想が混じりあったお話。現実の中での「遊び」がファンタジーにつながっていってしまうところがおもしろい。共感できるすごく普通の子どもの物語だと思う。
『かえるのエルタ』福音館書店 1964 大村百合子
 かえるのお城へ行く幼年向けファンタジー。初めて読んだ後、読みたかったのに手近になくて再読できなかったりしたため思い入れのある作品。
『らいおんみどりの日曜日』福音館書店(福音館創作童話シリーズ217) 1969 山脇百合子
 キャベツの好きな緑のライオンの話。娘に歯磨きはらいおんみどりのように「口の中を三べんほどかきまわす」では駄目と教えるのに使った本(笑)。
『たんたのたんけん』学習研究社(新しい日本の幼年童話1) 1971 山脇百合子
『たんたのたんてい』学習研究社(新しい日本の幼年童話8) 1975 山脇百合子
 男の子が野原で「探検」したり「探偵」したりするのをファンタジーを交えて描いた連作。出てくるいろいろなもののディテールなどがおもしろかった。
『ぐりとぐら』福音館書店 1963 大村百合子
『ぐりとぐらのおきゃくさま』福音館書店 1966 山脇百合子
『ぐりとぐらのかいすいよく』福音館書店 1976 山脇百合子
『ぐりとぐらのえんそく』福音館書店 1979 山脇百合子
『ぐりとぐらとくるりくら』福音館書店 1987 山脇百合子
『ぐりとぐらの1ねんかん』福音館書店 1997 山脇百合子
『ぐりとぐらとすみれちゃん』福音館書店 2000 山脇百合子
『ぐりとぐらのおおそうじ』福音館書店 2002 山脇百合子
 二匹ののねずみの絵本の連作。1作目は森へ行くと大きな卵があって…という話。声に出して読んでもリズムのいい本。これを読むとカステラが食べたくなる。大人になってから読むと、あの卵は何の卵だったのか?食べちゃって良かったのか?とか気になったりして。続編になると、だんだんぐりとぐらの体形が丸っこくなっている。
 『ぐりとぐらのおおそうじ』は『おひさまはらっぱ』(福音館書店 1977)という作品集に「ぐりとぐらの大そうじ」の題で入っていた話を改稿したもの。
『そらいろのたね』福音館書店 1964 大村百合子
 きつねからもらった種をまくと家が生えてきてどんどん大きくなって…という話の絵本。よく考えるとこういう幼児の発想ってシュール。
『本・子ども・絵本』大和書房 1982 山脇百合子
 生い立ちや読書に関するエッセイ集。
『絵本と私』福音館書店 1996
 未読。絵本に関するエッセイ集。
梨木 香歩なしき かほ/1959~  )
 私としては珍しく、この人の話ならファンタジーよりも現実の生活や人間関係を描いた物語が読みたいと思える作家。特に「おばあさんと孫娘」の関係がいい。児童ファンタジー作家から幻想小説家へ?
『西の魔女が死んだ』小学館 1996 野中ともそ装画(表紙) ← 楡出版 1994 長新太装幀(装画) → 新潮社(新潮文庫) 2001 早川司寿乃カバー装画
 登校拒否の少女の心を描く小品。明確な「解決」はないが納得して読める。何と言ってもイギリス人の「魔女」のおばあちゃんがいい。後日談の短編を追加して新潮文庫から出版された。
『裏庭』理論社(理論社ライブラリー) 1996 矢吹伸彦装幀・装画 → 新潮社(新潮文庫) 2001 早川司寿乃カバー装画
 奇妙な異世界に行くファンタジー。現実の人間の心の中の問題を扱っていて、形式はファンタジーだが本質はリアリズムである物語。
『丹生都比売』原生林 1995 村山万里子装丁
 壬申の乱のころの草壁皇子を主人公にした歴史ファンタジー。地味で静かな物語だが、細やかな人物の心理描写はこのころからのものなのだなあと思った。
『エンジェル エンジェル エンジェル』原生林 1996 吉村二郎造本 → 新潮社(新潮文庫) 2004 早川司寿乃カバー装画
 現在の少女とおばあさんの若い頃のことが字の色を変えて交互に語られる形式の物語。思春期の少女の不安定な心を描いている。緊張感がある話だが、読み終えてちょっとほっとする小品。
『からくりからくさ』新潮社 1999 早川司寿乃装画 → (新潮文庫) 2002
『りかさん』偕成社 1999 早川司寿乃カバー表紙絵・梨木香歩本文カット → 新潮社(新潮文庫) 2003 早川司寿乃カバー装画
 この2作は人形が係わる連作。『からくりからくさ』の方は「大人向け」の本で、若い女性たちが共同生活するというしっとりした落ち着きのある話。『りかさん』の方は人形の「りかさん」がより直接的に物語に関わる短編2編からなっていて『からくり~』の外伝のような感じの話。こういう一見穏やかな生活や人間関係の描写がうまい。『りかさん』の文庫版には書き下ろし短編「ミケルの庭」(『からくり~』の後日談)が追加されている。
『この庭に―黒いミンクの話』理論社 2007 須藤由希子
 「ミケルの庭」の続編の小品。
『家守綺譚』新潮社 2004 神木野啼鹿題字,広瀬達郎写真,神坂雪佳「白鷺」「巴の雪」見返し,新潮社装幀室装丁 → (新潮文庫) 2006 神坂雪佳「雪中竹」カバー装画
 明治も終わり頃の時代の、貧乏文士の日常雑記という形の連作物語。「大人向け」。「怪談話」と言えるが、ほのぼのとした雰囲気でゆっくりと味わって楽しめる。
『冬虫夏草』新潮社 2013 ユカワアツコ装画,神木野啼鹿題字,新潮社装幀室装丁 → (新潮文庫) 2017 神坂雪佳「牧童」カバー装画
 明治も終わり頃の貧乏文士の、常ならぬものがいろいろ出てくる日常雑記『家守綺譚』の直接の続編。一応行方不明の飼い犬を捜すという筋は一本あるものの、山の中の人々(?)の生活が味わい深い。
『村田エフェンディ滞土録』角川書店 2004 中村智装丁・挿絵 → (角川文庫) 2007 近藤美和カバーイラスト
 日本では明治から大正時代の、革命や第一次大戦の起こる前のトルコでの一考古学者の滞在記。「大人向け」。こちらも不思議なことも起こるが、異国での人々との穏やかな交流を描いた作品。
『沼地のある森を抜けて』新潮社 2005 牛島孝装画 → (新潮文庫) 2008 小沼寛カバー作品,松浦文生カバー撮影
 家族(女系)に引き継がれる「ぬかどこ」の話。ファンタジーというよりホラーの範疇に入る話かも。ややミステリタッチで不思議が語られていく物語。
『f植物園の巣穴』朝日新聞出版 2009 加藤竹斎「小石川植物園植物図」装画 → (朝日文庫) 2012 加藤竹斎「秋海棠」カバー画
 多分現代より少し前の時代の、植物園に勤める一人の男の出会った不思議なできごと。「ファンタジー」というより「幻想怪奇」に近い、なんとも奇妙な物語。
『ピスタチオ』筑摩書房 2010 小桧山聡子装画 → (ちくま文庫) 2014
 これは現代の、ライターの女性がアフリカで体験する霊的な?できごと。飼い犬の不可解な病気に始まり、一つの話中話で終わる。シビアな現実と呪術的な日常が混じり合う物語。
『僕は、そして僕たちはどう生きるか』理論社 2011 チカツタケオイラストレーション → 岩波書店(岩波現代文庫) 2015 木内達朗カバー画
 ちょっと変わっていると見られる中学生の少年が主人公。友人宅の豊かな植物が茂る庭を舞台に、リアルな現代社会と個人の「問題」が提示される。
『雪と珊瑚と』角川書店 2012 唐津のり子装画,名久井直子装幀 → (角川文庫) 2015
 シングルマザーの女性が子育ての中で総菜カフェを開くという現代もの。いろいろとうまく行き過ぎる気がしないでもないが、こういう話もまあいいかな。
『海うそ』岩波書店 2014 高山裕子装画,緒方修一装丁 → (岩波現代文庫) 2018
 戦前とある島の自然の中と人の営みの跡を歩いた一人の人文地理学者。「五十年の後」に再訪した島を見て、行き着いた静かな感慨。
『春になったら莓を摘みに』新潮社 2002 星野道夫カバー撮影 → (新潮文庫) 2006 星野道夫撮影
 イギリス滞在時に過ごした家を巡る人々のことを中心に、淡々としかし細やかに綴られた「大人向け」の自伝エッセイ。静かな味わい深い一冊。
『ぐるりのこと』新潮社 2004 さげさかのりこ扉絵 → (新潮文庫) 2007 南桂子「公園」カバー装画
 「大人向け」のエッセイ集。近年の時事的なこと、それも決して楽しくないことが多く取りあげられているので、やや暗く重い。それでも「しようがないなあ」とため息をつきながら真摯に向きあっていこうとする姿勢が見える。
『水辺にて―on the water / off the water』筑摩書房 2006 星野道夫カバー写真 → (ちくま文庫) 2010
 「大人向け」のエッセイ集。カヤックを漕ぐシーンから始まり、アウトドアなことをしている静かな状景を描いた文章が中心。冒頭にアーサー・ランサムへの言及もあってちょっと嬉しい。
『不思議な羅針盤』文化学園文化出版局 2010 柳智之イラストレーション → (新潮文庫) 2015 西郡友典カバー写真
 「大人向け」のエッセイ集。日常で出会ったこと、感じたことについての文章を集めたもの。羅針盤のカットがおしゃれ。
『鳥と雲と薬草袋』新潮社 2013 西淑装画・挿画
 「大人向け」のエッセイ集。近年の時事的なこと、それも決して楽しくないことが多く取りあげられているので、やや暗く重い。それでも「しようがないなあ」とため息をつきながら真摯に向きあっていこうとする姿勢が見える。
那須 正幹なす まさもと/1942~2021)
 人気のシリーズ「ズッコケ三人組」が代表作。大学は農学系で森林昆虫学を専攻、卒業後は自動車のセールスマンをしていたという異色の経歴。広島生まれで原爆や戦争にまつわる作品や活動もある。
『それいけズッコケ三人組』ポプラ社 1978 前川かずお
 「ズッコケ三人組」のシリーズ第1作。それぞれ異なるタイプの、どこにでもいるような小学六年生三人組の活躍が楽しめる。

ハ行

浜 たかやはま たかや/1935~  )
 読みごたえのあるしっかりした作品を書く人なのだが、どこか一つ満足しきれないところがあるような…。
<古代王国物語> 偕成社 建石修志
 古代中央アジアを舞台のモデルにした架空の歴史物語の連作。少々暗くて重いところもあるが、骨太な読みごたえのある物語。1作目の『太陽の牙』は結構気に入ったが、3作目でちょっと気に入らないところがあって挫折し、4・5作目は未読。
『龍使いのキアス』偕成社 1997 佐竹美保
 落ちこぼれ少女が主人公の別世界ファンタジー(よくあるタイプ?)だが、これも読みごたえのある分厚い物語。主人公のキャラクターがはっきりしていていいなと思っていたんだけど…。
坂東 眞砂子ばんどう まさこ/1958~2014)
 児童文学でデビュー後、大人向けのホラーなどを書くようになり、『山妣(やまはは)』(新潮社 1996)で直木賞を受賞した。
『はじまりの卵の物語』理論社(地平線ブックス8) 1989 大沢幸子
 現実の子どもが別世界へ行くタイプのファンタジー。このころ読んだ、ちと「はずれ」だった新鋭作家の作品の一つ。内容覚えてない…。
『満月の夜 古池で』偕成社(偕成社ワンダーランド19) 1997 廣川沙映子絵 → 角川書店(角川文庫) 2006
 現実の中で不思議なことが起こるタイプのお話。前半はホラーっぽい無気味な雰囲気が色濃く漂っているが、後半はユーモア・ファンタジーという感じで楽しめた。
平塚 武二ひらつか たけじ/1904~1971)
 小学校のころ通っていた塾の先生(のちの「少年詩」の詩人、重清良吉)が児童文学作家を志していたころの「師匠」だったらしい。『平塚武二童話全集』(全6巻 童心社 1972)が出ている。
『いろはのいそっぷ』童心社(平塚武二童話全集2) 1972 長新太絵 ← 実業之日本社 1953
 「いろは…」の1文字ずつに対応する小話集。家にあったのだがあまり思い入れはなかったので細かいことは記憶にない。
『風と花びら』岩波書店(岩波少年文庫) 1977 鈴木義治
 短編集。あまり印象に残っておらず、古い感じがしたような気がする。1942年初刊。
『太陽よりも月よりも』実業之日本社 1969 田代三善
 架空の国の歴史物語。壮大な物語のようだが(実はほとんど覚えていない)、あまり好きなタイプの話ではなかった気がする。1947年初刊。
福永 令三ふくなが れいぞう/1928~2012)
 作品結構書いているのに、あまり評価されていないと聞いたような気がするが…?
『クレヨン王国の十二か月』講談社(児童文学創作シリーズ) 1965 杉田豊絵 → (講談社青い鳥文庫) 1980 三木由記子絵 → (児童文学創作シリーズ―クレヨン王国シリーズ1) 1986
 女の子が「王妃さま」と一緒に不思議な場所で様々な冒険をする物語。「中学年向け」の軽い話だが、12色のクレヨンにちなんだ色の世界がそれぞれおもしろい。この世界の連作の最初の作品。
舟崎 克彦ふなざき よしひこ/1945~2015)
 幼年向けから中学年向けくらいの話では異色な、グロテスクだがおもしろいナンセンス・ファンタジーを書いている作家。絵も自分で描いている。
『トンカチと花将軍』 舟崎靖子共作 福音館書店 1971 舟崎 克彦絵 → 講談社(講談社文庫) 1986
 愛犬を探して不思議な世界へ迷い込むナンセンス・ファンタジー。出てくるいろいろなキャラクターがそれぞれおもしろくて楽しいお話。
<ぽっぺん先生物語> 筑摩書房 舟崎 克彦
 冴えない大学の生物学の先生が奇妙な出来事に巻き込まれるナンセンス・ファンタジー。一見軽いコミカルな話のようでいて、実は結構暗くグロテスクなところのある「幻想文学」。5作読んだ中では(後半の4作は未読)、個人的には明るい『~日曜日』が好きだが、3作目の『~笑うカモメ号』が無気味さ加減を含め一番良くできていると思う。幼年向けのシリーズもあり。一部の巻が角川文庫・ちくま文庫・岩波少年文庫からも出ている。
『雨の動物園―私の博物誌』偕成社(偕成社文庫) 1975 舟崎 克彦絵 ← (少年少女創作文学) 1974
 さまざまな動物たちとの出会いと別れを描いた自伝的物語。いくつか賞を取ったりもしているのだけど、あまり印象に残らなかったらしく内容を覚えていない。ちくま文庫からも出ていた。
『ババロワさん 今晩は』偕成社 1975 舟崎 克彦
 とある屋敷にへーんな動物がいて…という絵本。この作者らしいブラック・ユーモアな物語になっている。
『ファンタジィの祝祭』文化出版局 1981
 未読。ファンタジーに関するエッセイ集。
古田 足日ふるた たるひ/1927~2014)
 評論から出発した人とは知らなかったが、作品は読んだものは割とおもしろかったのになぜかろくに読んでいない…。ファンタジーじゃない「少年小説」系だからか? 『全集 古田足日子どもの本』(全13巻,別巻1 童心社 1993)が出ている。
『大きい1年生と小さな2年生』偕成社 1970 中山正美
 体は大きいけれど弱虫の1年生の男の子と、小さいけれど気が強い2年生の女の子の話。確か1年生のときに読んで、何だか印象に残っている本。
『ロボット・カミイ』福音館書店 1970 堀内誠一
 紙箱でできたロボットの話、だったと思う。幼稚園に行って、いたずらでわがままな幼児を思わせる行動をして騒動になるという楽しい話だったかな?
『おしいれのぼうけん』童心社 1974 田畑精一共作
 画家と共作の形になっている絵本。二人の男の子が、いたずらをして入れられたおしいれの中から空想の世界へ行って冒険をする話。中川李枝子の『いやいやえん』と同じく、現実の中からファンタジーにつながっていく物語。どきどきする冒険が楽しい。
『現代児童文学論―近代童話批判』くろしお出版 1959
 未読。児童文学評論。
別役 実べつやく みのる/1937~  )
 岸田国士戯曲賞を受賞している劇作家。児童劇分野では斎田喬戯曲賞も受賞。『恐竜の飼いかた教えます』(ロバ-ト・マッシュ著 平凡社 1986)という絵本のような実用書(?)の翻訳も手がける。
<そよそよ族伝説> 三一書房 スズキコージ絵 → ブッキング
  1. 『うつぼ舟』1982 → 2005
  2. 『あまんじゃく』1983 → 2005
  3. 『浮島の都』1985 → 2005
 独特の住人がいる「和風」な別世界のファンタジー。話がやや暗くぱっとしないので、私には今一つだった。雑誌「幻想文学」で結構評価されていたのでかなり期待したからかも。「《おおうみ》の巻」となっていて続きがほのめかされていたが、その後続巻は出ていない。

マ行

松谷 みよ子まつたに みよこ/1926~2015)
 「古典作家」の一人だが、この人の作品はやや思想やテーマ的な面が強く出ているものが多い気がして、私には今一つのが多かったりする。全集に『松谷みよ子全集』(全15巻 講談社 1971~1972)、『松谷みよ子の本』(全10巻,別巻1 講談社 1994~1997)があるほか、民話の再話・研究の著作も多い。
『龍の子太郎』講談社 1960 久米宏一
 創作民話。この人の作品としてまず出すべきもので筋は知っているが、ちゃんと読んではいないかもしれない…。
<モモちゃんとアカネちゃんシリーズ> 講談社
  1. 『ちいさいモモちゃん』1964 菊池貞雄
  2. 『モモちゃんとプー』1974 菊池貞雄
  3. 『モモちゃんとアカネちゃん』1974 菊池貞雄
  4. 『ちいさいアカネちゃん』1978 菊池貞雄
  5. 『アカネちゃんとお客さんのパパ』1983 伊勢英子
  6. 『アカネちゃんのなみだの海』1992 伊勢英子
 初期の2作は現実と空想が入り交じったほのぼのとした幼児のお話だが、3作目には父親が靴だけ帰ってくる、という形で両親の離婚という問題を書き込んで話題になった。離婚を盛り込んだことばかりで評価されているようだが、幼児の世界がうまく書かれているのが良い。ただモモちゃんの話だと思って読んでいたら、だんだんアカネちゃんの話になってしまうのは不満だったりする。4作目以降は未読。5作目までは講談社文庫版もあり。
『ジャムねこさん』大日本図書(子ども図書館) 1967 箕田源二郎
 「子ぎつねコン」「花いっぱいになぁれ」「お星さまになったタイコ」「オバケとモモちゃん」「おんにょろにょろ」「ジャムねこさん」の6編を収録する短編集。オバケ屋にオバケを買いに行く「オバケとモモちゃん」がおもしろかった。
『ふたりのイーダ』講談社(少年少女現代日本創作文学1) 1969 朝倉摂絵 → 1976 司修
<直樹とゆう子の物語> 偕成社 司修
 「戦争」を主なテーマに、ある家族をめぐる話のシリーズ作品。原爆が絡む『ふたりのイーダ』はいすがしゃべって歩き回るという話、歴史を扱った『死の国からのバトン』はタイム・スリップする話と、初めの2作はファンタジーの手法を使いながら描かれているが、「ファンタジーを書く」ということより「戦争などのテーマを書く」話であるということが強く出ている気がして今一つ(重苦しく暗いし)。ナチスのユダヤ人強制収容、七三一部隊、朝鮮からの引き揚げを扱っている3作目以降は未読。
『日本の神話』1~2 講談社 1968 瀬川康男
 日本の神話を再話したもの。私はこれで日本神話を覚えたような。後半の英雄譚より前半の神様たちの物語の方がファンタジーの要素が強いのでおもしろくて好きだった。
<松谷みよ子 あかちゃんの本> 童心社
 赤ちゃん絵本。単純な繰り返しパターンなどが娘に結構うけていたような…。『いい おかお』の最後の一文が実は謎。
まど みちおまど みちお/1909~2014)
 子どものための詩の第一人者。「ぞうさん」などの童謡の作詞者として有名。国際アンデルセン大賞を1994年に受賞。『まど・みちお全詩集』(全1巻 理論社 1992)が出ている。
『てんぷらぴりぴり』大日本図書(子ども図書館) 1968 杉田豊
 子どものころ読んだ、「歌」でない子どものための詩集の多分唯一のもの(収録詩の中には「歌」になっているものもあるかもしれないが)。「つけもののおもし」とかが印象に残っている。
みお ちづるみお ちづる/1968~  )
 シリーズも書き始めたようだが、異色なファンタジー作家になれるか?
『ナシスの塔の物語』ポプラ社(青春と文学11) 1999 田村映二カバー装画
 架空のアラブ風のお話。少年の成長物語、青春小説としての佳作。日本人にはなじみのない砂漠の町の生活や風俗がとても自然に描かれている。
三木 卓みき たく/1935~2023)
 1966年詩集『東京午前三時』でH氏賞を、1973年小説「鶸」で芥川賞を受賞し、児童文学分野でも『ぽたぽた』(筑摩書房 1984)で野間児童文芸賞を受賞し、アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズの翻訳も行うなど多才な人。『三木卓童話作品集』(全5巻 大日本図書 2000)が出ている。
『かれらが走りぬけた日』筑摩書房 1978 司修装幀 → 集英社(集英社文庫) 1982
 不思議な場所に紛れ込んでしまう少年少女の物語。あまりおもしろくなかったという漠然とした印象以外は忘れてしまっている。
『星のカンタータ』角川書店(角川文庫) 1975 原田維夫絵 ← 理論社 1969 池田龍雄
 様々な不思議な「ことば」の世界へと案内されるという少年SF小説で、こっちのほうが私の好みだったような…。
三田村 信行みたむら のぶゆき/1939~  )
 児童ホラー、怪談話などをよく書いているベテラン作家。
『おとうさんがいっぱい』理論社 1975 佐々木マキ
 児童ホラー短編集。「ゆめであいましょう」「どこへもゆけない道」「ぼくは5階で」「おとうさんがいっぱい」「かべは知っていた」の5編を収録。怖くて気持ち悪かったのでと~っても嫌い(笑)。
宮沢 賢治みやざわ けんじ/1896~1933)
 「童話」「児童文学」という枠内ではおさまらない、日本の近代幻想文学の孤島というか、日本文学の中の「突然変異」とでも言うべき人ではないかと思っている。その作品は絵本やアニメ、映画、舞台、朗読劇など様々な形態になっているが、文章のテキストも生前はろくに刊行されなかったので異稿がいろいろあるらしい。『校本 宮沢賢治全集』(全14巻 筑摩書房 1973~1977)など、全集・作品集も一般書・児童書ともにいくつも刊行されている。
『宮沢賢治童話集』宮沢清六,堀尾青史編 実業之日本社(全1冊版) 1969 司修
 家にあったのはこの本。かなりな数の作品が入っていたが、全作品ではなかったし全部は読まなかった気がする。
 私が好きなのは「幻灯」のイメージと言葉のリズムが美しい「やまなし」と、奇妙でおもしろい「ばけもの」の世界の話「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」(「グスコーブドリの伝記」の原型となったもの)。リアリズムの話として読んだ「風の又三郎」、スケールが大きくイメージが美しい「銀河鉄道の夜」も印象深い。
 そのほか「注文の多い料理店」「セロひきのゴーシュ」「よだかの星」をはじめ、「雨ニモマケズ」「オッペルとぞう」「月夜のでんしんばしら」などが収録されていた。
椋 鳩十むく はとじゅう/1905~1987)
 動物物語の第一人者と認識している。鹿児島の図書館に勤め、「母と子の二十分間読書運動」を提唱。全集・作品集も『椋鳩十全集』(全26巻 ポプラ社 1969~1981)、『椋鳩十の本』(全34巻,補巻2 理論社 1982~1990)など何度か出されている。
『片耳の大シカ』ポプラ社(椋鳩十全集2) 1969 武部本一郎
 堂々たるシカの話じゃなかったかな。短編集だったようだが、表題作の具体的な内容や、ほかにどんな話が入っていたかは忘れてしまった。1951年初刊。
向山 貴彦むこうやま たかひこ/1970~2018)
 物語の「つくり」に凝るタイプの作家のような気がする。
『童話物語』幻冬社 1999 宮山香里絵 → 上・下 (幻冬社文庫) 2001
 別世界ファンタジー。はじまりはやや辛く、物語の解決方法にはそれほど意外性はないが、世界はよくできていておもしろい。この物語で出てこなかった他の場所にも興味が湧く。
森 絵都もり えと/1968~  )
 うまい「青春小説」の書き手。1991年の処女作「リズム」で講談社児童文学新人賞を受賞。低学年向けの読みものもうまく、絵本の翻訳なども手がけるほか、「大人向け」の小説でも『風に舞いあがるビニールシート』(文藝春秋 2006)で直木賞を受賞する。
『カラフル』理論社 1998 長崎訓子illustration → 文藝春秋(文春文庫) 2007
 死んだはずが「抽選」にあたって現世に「再挑戦」するという物語。実態は中学生の男の子の日常生活を描いたほとんどリアリズムの話。軽いタッチで明るく読める「青春小説」でなかなか良かった。
<にんきものの本> 童心社 菊池貞雄
  1. 『にんきもののひけつ』1998
  2. 『にんきもののねがい』1998
  3. 『にんきものをめざせ』2001
  4. 『にんきもののはつこい』2001
 小学校3~4年生の話だが、中学年向けというより幼年童話か絵本の形式の楽しい物語。1・2巻が男の子編、3・4巻が女の子編でそれぞれ違った物語が楽しめる。
『DIVE!!』角川書店(角川文庫) 2006 高柳雅人Book Design
 全四巻(全四部)だがそれぞれの巻のラストが次の巻の話につながるので、全体で一つの話という感じ。一部~三部はそれぞれ主人公を変えて話が進み、四部はこれまでの三人を含めたさまざまな人物の視点から描かれる。スポーツもの、それも飛込みという競技は全くと言っていいくらい知らなかったけれど、大変おもしろく読める。青春スポーツものの名作の一つ。森絵都はやっぱりうまい。単行本4冊→文庫本2冊→ハードカバー1冊(2008年)と出て、2009~2010年には児童文庫4冊本も出た。
『風に舞いあがるビニールシート』文藝春秋 2006 ハヤシマヤ装画 → (文春文庫) 2009
 大人向けの小説の短編集。話がうまい人だなあと思ってはいたけど、この作品集でなんと直木賞を受賞した。でも児童文学や青春小説よりおとなしい感じがする。

ヤ行

山口 華やまぐち はな/1966~  )
 待望のシリーズ完結! 新作も出ている。
<グリーンファンタジー シリーズ> 教育出版センター → 銀の鈴社 君島美知子
  1. 『海鳴りの石―ニディナ城の巻』1991
  2. 『海鳴りの石II―呪われた石の巻』1994
  3. 『海鳴りの石III―動乱の巻』2004
 小王国の世継ぎの君をめぐる(一応)別世界ファンタジー。最後まで続けて一気に出して欲しかったなー。でもちゃんと完結したのでやれやれ。
山下 明生やました はるお/1937~  )
 「海」をテーマとする作家。チゾン&テイラーの『おばけのバーバパパ』の翻訳も手がける。
『うみのしろうま』実業之日本社 1972 長新太絵 →『海のしろうま』理論社 1980
 海からやってきたしろうまを見た少年の物語。結果的にはファンタジーとは言えないかもしれない作品だが、「ファンタジーの味わい」がある。
湯本 香樹実ゆもと かずみ/1959~  )
 きめの細かい青春小説の書き手という感じ。『夏の庭』『春のオルガン』『ポプラの秋』と来て、次は「冬」か?
『夏の庭―The Friends』ベネッセコーポレーション 1992 真舘嘉浩カバーデザイン → 徳間書店 2001 → 新潮社(新潮文庫) 1994
 老人と少年たちの一夏の交流。ささいな日常の話で先の展開も読めるけれど、上質な「青春小説」という感じで気に入った。
吉村 夜よしむら よる/1972~  )
 児童ファンタジーのほか、ヤングアダルト文庫でファンタジーやゲームのノベライズを書いている。
『メルティの冒険―遥かなるアーランド伝説』ポプラ社(心にのこる文学34) 1998 佐竹美保
 それぞれの「夢」をかなえるため旅に出る人々の物語。本人にはちょっと気の毒だけど、主人公が「強くたくましい女の子」なのがいい。

ラ行

寮 美千子りょう みちこ/1955~  )
 不思議な雰囲気の作品を書く人。絵本や幼年向けの物語のほか、天文関係のノンフィクションの著作もある。「大人向け」の小説『楽園の鳥―カルカッタ幻想曲』(講談社 2004)で泉鏡花文学賞を受賞する。
『小惑星美術館』パロル舎(貘の図書館) 1990 小林敏也
 コンピュータに管理されたユートピアはこれでいいのかというSFファンタジー。一昔前のありがちなパターンだけれど、透明感のある感性が光る佳品。
『ノスタルギガンテス』パロル舎 1993 Yoshihiko UEDAカバー写真
 この作品は現代の日本のどこかを舞台にした物語。とある巨木のところに日々ふえ変化していく「キップル」。ファンタジーでも「無国籍童話」でもないが、どこか「幻想文学」の香りがする作品。

ワ行

渡辺 茂男わたなべ しげお/1928~2006)
 幼年向けの物語や絵本を中心とした作家で、翻訳者としてもルース・スタイルス・ガネットの『エルマーのぼうけん』をはじめ数多くの作品を手がけている。この人も戦後の日本の児童文学界の、福音館の絵本と岩波の児童書で育った私の世代には「恩人」である偉大な人物。大学の学科、渡辺茂男先生が教えていたころに学びたかったな(でもアメリカ式の教育で原書をがんがん読むとかで大変だったかも(笑))。
『寺町三丁目十一番地』福音館書店(福音館創作童話シリーズ216) 1969 太田大八絵 → 講談社(講談社文庫) 1976
 自伝的物語で、古い話だけど子どもたちが生き生きと遊ぶところなどがおもしろかったと思う。私がこの人の物語で一番にあげるのはこれ。
『もりのへなそうる』福音館書店 1971 山脇百合子
 幼年向けのファンタジー。森へ遊びに行くと大きな卵があって、そこから不思議な生き物が…という楽しいお話。
『しょうぼうじどうしゃ じぷた』福音館書店 1963 山本忠敬
 「消防ジープ」を主人公にした、根強い人気のある古典的作品の絵本。いい話だ。子どもが消防署見学に来ると「どうしてじぷたはいないの?」と聞かれることもあるとか。平凡社の『絵本百科』3巻(1963)の「しょうぼう」の項の絵はこの本の山本忠敬が描いているのだが、しっかり「消防ジープ」というものも描いてあったりする。そう言えば、きゅうきゅうしゃのサイレンが確か昔は「うーうーうー」だったような…。
『くるまはいくつ』福音館書店 1967 堀内誠一
 「くるま」に関する知識の絵本。この人の作品には車や電車などの乗り物に関する物語や絵本も多く、これもその一環か。
『へそもち』福音館書店 1966 赤羽末吉
 民話の再話絵本(だと思っていたのだが、創作かも)。言葉のリズムがすごくいい本。「「うん」とちからを いれると、「すん」と ぬけてしまうのです。」のくだりはきょうだいでいろいろ応用して遊んだもの。
<くまくんの絵本> 福音館書店 大友康夫
 くまの子を主人公にした2~3歳児向け(?)の絵本。幼児の行動パターンをよく表していると思う。『どうすればいいのかな?』で幼児でもこんな風にシャツとズボンを間違えたりしない、子どもを馬鹿にしているという意見を見たことがあるが、それは表面だけ見た「浅読み」で、これは子どもがわざと間違えたふりをして遊びながら着替えを楽しんでいるということじゃないのかなあと私は思っている。
<くまたくんのほん> あかね書房 大友康夫
  1. 『ぼく パトカーにのったんだ』1979
  2. 『ぼく およげるんだ』1979
  3. 『アイスクリームがふってきた』1979
  4. 『ぼく まいごになったんだ』1980
  5. 『くまたくんのおるすばん』1980
  6. 『ぼく しんかんせんにのったんだ』1981
  7. 『ぼく キャンプにいったんだ』1981
  8. 『ぼく SLにのったんだ』1982
  9. 『くまたくんとおじいちゃん』1983
  10. 『くまたくんのたんじょうび』1984
  11. 『ぼく ひこうきにのったんだ』1986
  12. 『くまたくんちのじどうしゃ』1986
  13. 『ぼく れんらくせんにのったんだ』1987
  14. 『ぼく ブルートレインにのったんだ』1988
  15. 『ぼく じてんしゃにのれるんだ』1989
 「くまたくん」という名前が出てくるが、福音館のシリーズの続きにあたる同じコンビによるもう少し字の多い4~5歳児向け(?)の絵本。この作者らしく乗り物ネタも多くなり、『ぼく ひこうきにのったんだ』などでは飛行機・飛行場の様子などがかなりマニアックに出てくるところもあり。
『絵本の与え方』日本エディタースクール出版部(エディター叢書18) 1978
 タイトルがちょっと何だが、絵本について学ぶときの基本図書の一つ。
『幼年文学の世界』日本エディタースクール出版部(エディター叢書23) 1980
 アメリカでの児童図書館員としての修行時代のことなど、いろいろ興味深い。
『すばらしいとき―絵本との出会い』大和書房 1984
 未読。マックロスキーとの出会いのことなど。
『心に緑の種をまく―絵本のたのしみ』新潮社 1997 → (新潮文庫) 2007
 未読。絵本45冊の魅力を綴るエッセイ。文庫版には長男による付記を収録。
わたり むつこ亘理 睦子/1939~  )
 絵本や幼年向けの物語が多いためか、最近はあまり児童ファンタジー作家として注目されていないような…。
<はなはなみんみ物語> リブリオ出版 本庄ひさ子絵 → 講談社(講談社文庫) → 岩崎書店
  1. 『はなはなみんみ物語』1980 → 1986 → 2015
  2. 『ゆらぎの詩の物語』1981 → 1986 → 2015
  3. 『よみがえる魔法の物語』1982 → 1986 → 2015
<ちいさなはなはなみんみ> リブリオ出版 本庄ひさ子
  1. 『たんじょうのきろく』1984
<えほんはなはなみんみの森> リブリオ出版 本庄ひさ子
  1. 『いちばんすてきなひ―はなはなみんみのはる』2002
  2. 『なつのぼうけん―はなはなみんみのなつ』2002
  3. 『おつきみパーティー―はなはなみんみのあき』2002
  4. 『ふゆごもりのひまで―はなはなみんみのふゆ』2002

 小人兄妹の冒険を描く別世界ファンタジー。背景の「戦争」のことがちょっとクサくてぎごちなかったり、メルヘンタッチなところが少しちぐはぐな感じがしたりしないでもないが、結構「本格ファンタジー」っぽい、よくできている物語だが…。
 絵本の形の外伝(?)があり「1」となっていて2冊目以降は未刊だったが、新しいシリーズが刊行された。

ホーム(x)


 Amazon.co.jpアソシエイト